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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2017-11

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体験入学 第一章(2)


 (2)

 用紙を見た翠は、用紙の上のほうに書かれている、「体験入学申込用紙」の文字を指差した。
「ああ、体験入学よ。入学試験の前に、学校での授業や給食を体験するの。いま五月でしょ。体験入学の二回目が、来月六月末に開かれるわけ。で、これがその申込書。まだ受付中よ」
「……試験前なのに、妹さんの合格が決まってるって、まさか裏口……痛っ」
 馬鹿なことを言ったら、わき腹をつねられた。この翠という少女、相手を構わず容赦ない攻撃でも知られている。学年一のサディストという評判だ。
「変なこと言わないで。妹は外国語特別枠の推薦入学よ」
 ようするに、外国語に秀でた児童を一般入試前に選り分ける枠らしい。改めて、翠の妹の語学力の高さをうかがわせる。
「で、柚川の知り合いでちょうどいい年齢の子がいたら、紹介してあげて。そのパンフレットはあげるから」
「……いないなぁ、そんな子」
 世代格差があるので近所の子供たちについてはあまり知らないし、親類はみな自分よりも年上か、あるいは生まれたばかりだ。そんなことをぼんやり考えながら見ていると、翠が体験入学の申込用紙を手に取った。
「残念ねぇ。じゃ、使わないか。……ね、こう云うの見てると、何か書いてみたくならない?」
 勧められて、改めて用紙を眺める。確かに使い道がないなら、とりあえずジョークで何か書きこみたくなるのが人情だ。
「そうだな。誰かの名前で適当に書いてみようか。えっと、さこうみどり……さこう?」
 酒匂の字がわからない。「酒勹」まで書いたところで、ペン先が迷う。翠は軽く笑って、
「柚川武生でいいじゃない。どうせ冗談なんだし」
 それもそうかと、武生は自分の名前を書き込む。後の性別の欄を見て、悪戯心が芽生えた。単に「男」ではつまらない。翠も同じことを考えていたのか、
「男じゃつまんないね。女にしよ、女に」
「よっしゃあ」
 武生は勢いのまま、「女」にチェックを入れる。
「そうすると、名前のほうがおかしいね。変えない?」
「うーん、そうだな。何にしよう」
「ひっくりかえして名字をたけお……竹に、尻尾の尾で竹尾にしてさ、名前はゆずかわから……うん、ゆずかちゃんなんてかわいいじゃない」
 翠はよどみなく答える。武生はその場のノリで、
「お、いいね」
と言いながら、「柚川武生」の文字を消して「竹尾ゆずか」と書きいれた。「竹尾ゆずか」「女子」の文字を見ると、武生は少し恥ずかしいような、おかしいような、奇妙な気分だった。
「授業は何にする? 深山だし、やっぱり英語?」
「そうだね。……苦手だけど」
「小学生相手に負けてどうするのよ」
 くすくす笑う翠だが、さっきの話を聞くと冗談にならない。それでも「英語」に丸をつけ、給食体験にも参加希望を書き込んだ。
「保護者は? やっぱり酒匂?」
「そうね。貸して」
 翠は保護者の欄に、自分の名前を書き込む。それならさっき、児童氏名を書くときに、酒匂が自分で書いてもよかったのに。武生はふとそう思った。
 自分の名前を保護者欄に書き込んだ翠は、見せびらかすように武生の前に用紙を突き出し、
「じゃーん、できたっ。ほらほら、竹尾ゆずかちゃんの体験入学申込用紙よ!」
「はいはい。……出すなよ?」
「ふふん、どうしようかな」
 面白そうに笑う翠。まぁ本気で出すわけがないし、出したとしても大した問題にはならないだろう。冗談でしたと頭を下げれば済むことだ。そう思って、翠と一緒に笑い合っている時、机の上の携帯が鳴った。寝る前に設定したアラームだ。
「やべっ。もう予備校に行かなきゃ。……じゃな、酒匂。冗談でも出すなよっ」
「善処しまーす。じゃ、お疲れ~」
 荷物をまとめて教室を後にする武生。その後ろ姿が完全に視界から消えたのを見て、

 ……翠は、にやりと笑った。
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