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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2017-10

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体験入学 第四章 Part.11

「……隣は元気ね」
「一二歳と一五歳の少年二人が恋人同士で、一緒にいたいがために小学校に女子として編入。……世も末ね」
「まぁ、問題はないんじゃない? あたしは嫌いじゃないわ」
「あらお姉ちゃん。あたしだって悪いとは言ってないし、嫌いでもないわよ?」
 少年二人の客間を隣にした、別の客間。翠と茜はこの部屋のベッド脇に置かれたチェアに座って、のんびりとくつろいでいた。いかに壁が厚く防音性に優れた部屋とはいえ、何の遠慮もなしにぎゃんぎゃん喚く二人の声は、どうしても隣室に聞こえてくる。
「……でさ、どうしても確認したいんだけど」
 ベッドの中から声を出したのは、武生だった。首元まで布団をかけ、恨みがましい目つきで姉妹を眺めていた。
「今日、確実に俺の親が見つけるようなタイミングであの封筒が届いて――その日に限って、この家に児童会のみんなが一斉にやってきていたのが偶然だなんて、言わないよね?」
「ええ。だいたい、あの封筒の切手には消印がついていなかったの、気付かなかった?」
 茜は平然と答える。
 武生が家族に内緒で回収できないタイミングを見計らい、あの封筒を柚川宅の郵便受けに入れる。それにより、武生が家を出ざるをえないように仕向けたのだ。また一方で、この一件での協力者――悟、七菜の二人と、首謀者である瑠璃を集めておいた。
 さらに由音と来夏にすべての事情を明かし、瑠璃と武生の面会の場に潜ませておいて、フォローに当たらせた。彼女たち二人は、今日になって初めてすべての事情を知らされたらしい。それまでは翠や茜の思惑とは関係なく、悟や七菜をいじめて遊んでいただけのようだ。事情を知らされた彼女たち二人も、喜んで協力に当たった。
 そして武生を試し――さらに首謀者であるはずの瑠璃をあざむき、巧みに誘導することで、何とかこの大団円に持ち込んだのだった。それでも、武生がどのように返事をするかは出たとこ勝負の大ばくち。茜も翠も、かなり気を揉んだらしい。
 そこまでの事情を聞かされた武生は、ひときわ大きな溜息をついた。確かにそれなら、ご都合主義的なまでに「運が良く」「間がよい」いままでのあれこれも納得できる。
 思えば最初から、すべてこうなるように回っていた気さえする。しかしそれが結果として、決して悪くはなかったことも、いまなら判る。家族にうんざりしながらも離れられず、遠くの大学に行って自立するほどの覇気もなく、漫然と過ごしていた日々。そんな柚川武生の日々はここで終わり――そして、深山小学校への入学を目指す幼稚園児、竹尾ゆずかの人生が始まるのだ。
 それにここ二ヶ月の中で、竹尾ゆずかとして深山小学校の入学試験勉強をしているときのほうが、大学受験の勉強をしているときよりも、はるかに速いペースで学力が伸びていくのを感じていた。その方が、自分に合っているのだろう。
 ならば――ゆずかでも、いいじゃないか。
 茜と翠が、ベッド脇のチェアから立ち上がった。翠が武生の顔をのぞき込んで、優しく髪を撫でる。
「お休み、武生。そして、さようなら」
「うん。……おやすみ、酒匂」
 にっこり笑って目をつむると、やがて二人は部屋を出て行き、灯りが消される。暗闇の中布団に入った武生は、布団の下でパジャマに手を当てた。すでに、ゆずか誕生の準備は整っている。
 そうして武生は、ゆっくりと永い眠りについた……。

 * * *

「おはよう、ゆずかちゃん。朝よ!」
「あ、おはようございますっ、翠お姉ちゃん!」
「おはよう、ゆずかちゃん。今日も元気ね」
「茜お姉ちゃんも、おはようございますっ! うんっ、ゆずか、今日も元気だよっ!」
「そう。ゆずかちゃんはいい子ね。よく眠れたかしら?」
「うん、あのね、お布団がふかふかで、凄く気持ちよかったの。雲の上にいるみたい。だから、とってもよく眠れたよ。――あれ、その子、だぁれ?」
「あ、この子、私たちの妹なの。瑠璃っていうのよ。ゆずかちゃんと同い年だし、これから一緒に暮らすことになるから、仲良くしてね」
「はぁい。ね、るりちゃん、あたし、ゆずかって言うの。よろしくね」
「ゆずかちゃん。とっても可愛いお名前ね。あたし、るり。ゆずかちゃんと仲良くなりたいな」
「えへへ、ありがと。るりちゃん、これからよろしくね」
「うん、ゆずかちゃん、こっちこそよろしくっ!」
                     Fin.
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