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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2017-06

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体験入学 第四章 Part.8

 そして武生は、答えを口にする。

「……、……」

「……嘘……」
 その答えを聞いた瑠璃の顔が、驚愕に彩られた。この場面でそんな答えが示されるとは、全く想像していなかったのだ。顔が真っ白になり、唇が震え、表情が一気に幼くなる。
「嘘……嘘よ、何で……もう一回、言って!」
「何度でも言うよ。……その申し出は、受けられない」
 武生は、固い声で言った。目の前の少女の願い、それを叶えようとする姉たちの思い、少女のために恥を忍んできた少年たちの覚悟、それをすべて知った上で――武生は、それを拒否したのだ。
 瑠璃の顔から、一気に表情が抜け落ちていった。そこに怒りはない。ただ、悲しげで、寂しげで、孤独な表情だった。
 不意に武生の脳裡に、昔の記憶がフラッシュバックする。
(お前なんか友達じゃないやい!)
 武生は思い出す。小学校のころ、自分が言われた言葉を。友達から――いや、友達だと思っていた相手からの、拒絶の言葉。そして、思い出す。仲が良いと思っていた相手からそう言われた時に感じた、怒るよりも、ただ悲しくて、やるせなかったあの感情を。
 目の前の少女は泣きそうになりながら、それでも懸命に涙をこらえていた。彼女も判っているのだ。自分の願いが、どれほど理不尽で無茶なものであるのかを。そして、いままで周りの人が、彼女の理不尽や、無茶に協力してきたのは、ひとえに自分に対する同情によるものでしかないことを。従って、相手から拒否されてしまえば、もはや彼女には何の力もない。
(そうじゃない。そうじゃないんだ)
 だが――だからこそ、同情ではだめなのだ。同情で友達になったのでは、その時は楽しくても、ひとりになったときにみじめな気持ちになるだけの関係だ。同情を失えば、悲しみを残して終わるだけの関係だ。それではだめだ。
 逆に武生はこう思う。瑠璃はそんなみじめな「お友達」関係を望んでいるのだろうかと。
 そうではない。武生はそれを確信していたからこそ、彼女の願いを聞くわけにはいかなかった。彼女にとって必要なのは、彼女が頼んだから「お友達」になる、そんな相手ではない。
 だからこそ。武生は、断ることしかできなかった。
「じゃあ、俺はもう行くよ」
 武生は瑠璃に、背を向けた。廊下をむくと、いつの間にか茜はいなくなっている。
 彼は、廊下に向かって歩き出し、ドアノブに手をかけた。瑠璃はその背後で、追いすがることもなく、泣くこともせず、ただ立ちつくしたままだ。それは、あまりにも万能だった少女の、あまりにも無力な姿だった。そんな彼女を取り残して、ドアの隙間がゆっくりと、細くなっていく。
 ドアが閉まる直前、武生はこう、言い残した。
「そうそう、俺は明日この家を出るけど……代わりに新しく、ひとりの女の子がこの家に来るんだって。何でも、家族から追い出されたのを翠が預かることにしたらしいけど。その子も背が高いそうだから、仲良くしてやって欲しいな」
 そしてゆっくり、扉が閉められた。
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