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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2017-05

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体験入学 第四章 Part.7

「ああ……」
 武生は長嘆息をもらした。彼女が「お友達」に、それも「自分より背の高いお友達」に執着する理由。その理由が、ようやくはっきりした。
「最初に言っておくけど、瑠璃は六歳……本当に、幼稚園の年長さんよ。武生お兄ちゃんや、七菜お兄ちゃんとは違って」
 武生からほんの数メートル離れたところにいる彼女は、ゆっくりとそう言った。
「お医者さんが言うには、病気とは違うみたい。単に遺伝と発育の問題だって。背の高い遺伝子に加えて、他の子に比べて成長が早いんだって言うの。頭ももう、一三歳並に達しているらしいわ」
 そうだろう。声は甲高い、幼稚園児のものだったが、口調ははるかに大人びている。
 彼女が口にしなくても、いままで彼女がどんな思いで暮らしてきたか、武生はおよそ推測がついた。他の子に比べ、はるかに大きな体。深山附属のようなエリート幼稚園の中にあってさえ、優れた知能。
 彼女自身はごくごく普通の幼稚園児のつもりでも、周りはそうは見てくれない。背が高ければ、それだけ奇異の目で見られる。彼女のつらさは、同じ思いをした武生にはよく判った。
 しかも武生のように、後から幼稚園児のふりをさせられているわけではない。確かにそれはそれで恥ずかしさをそそるものではあるが、武生たちはいざとなれば、同年代の子どもたちの間に交じることができる。しかし彼女にはそれがない。あくまで本当の幼稚園児でありながら、同い年の子供の間では、鬼児にならざるをえない。
 ひとりの少女の身勝手なわがまま。しかしそのわがままは、彼女の生い立ちを想像すると――聞いてやらないわけには、いかなくなる。考えてみれば翠も、茜も、性癖には色々問題を抱えているものの、それなりの良識は備えた姉妹だ。もしごく普通の幼稚園児の妹が、こんなわがままを言ったんだとすれば、相手にはしないだろう。だが――長い間同年代の子どもたちの中で苦しんでいた妹が、このわがままを言ったのであれば、理解はできる。
 すべてはこの少女の、あまりにも幼い――しかし、幼いがゆえに悲痛な望みから、始まったのだ。
 彼女は自らの願いを叶えるための、遠大にして無謀な計画を、武生の目の前で解き明かす。
「最初は七菜お兄ちゃん。茜お姉ちゃんが高校の時、制服を作りに行って見そめた子らしいわ。そして瑠璃の事情を説明すると、七菜お兄ちゃん、すぐに瑠璃に協力してくれた」
 そう。すでに二年以上前から、「瑠璃より背の高いお友達を作る」計画は、進行していたのだ。
「でも七菜お兄ちゃんは、瑠璃の入学より一年早く中学を卒業しちゃうし、瑠璃より背が低かった。だから次の人が見つかるまでの間、一足先に入学してもらって、後で来る人の予行演習にしたの。割と上手く行ったわ……武生お兄ちゃんと同じように、学校での勉強についていけないから小学校からやり直したい、という口実を使ったの」
 中学を卒業していながら、小学校からやり直す。それは、どれほどの覚悟だろう。しかし七菜は、自らの選択として瑠璃に協力した。自分が小学一年生の女の子として扱われるのを覚悟して。あとに来る、瑠璃の「お友達」が少しでも楽になれるように。
(すでに先例は作っておきましたし……ね、文月さん)
(うん。……何せ、全く同じ口実を使って、僕が入っているんですから)
 先ほどの、悟と七菜のやりとりを思い出す。そう、あの発言を考えれば、悟も協力者に違いない。児童会で嗜虐趣味を持った女子二人の攻撃が、格好の標的である七菜に行かないように、悟はあえてミスを繰り返していたのだ。彼は自ら彼女たちの餌食になることで、少しでも七菜の負担を軽くしようとしたのだろう。
 察するに、悟が協力しているのはおそらく瑠璃のためではない。悟であれば、身長、卒業年度ともに瑠璃の望む条件を満たせるのに、瑠璃の「お友達」になることなく、中学に進学したのがなによりの証拠だ。
 武生は先ほど絡み合った、少年二人の指先を思い出した。おそらく悟は、七菜に対して憧れを抱いているのだ。少女のような美貌、優しさと、少年としての強さ、誠実さを兼ね備えた七菜に対して。そしておそらく七菜も、悟の想いを受け入れている。
「ふふ、だいたい気付いたみたいね。そう。七菜お兄ちゃんも、悟お兄ちゃんも、瑠璃のために……悟お兄ちゃんはほとんど七菜お兄ちゃんのためだけど、協力してくれていたの。あ、由音お姉ちゃんと来夏お姉ちゃんは、何も知らされてなかったのよ? お姉ちゃんたちが悟お兄ちゃんや七菜お兄ちゃんをいじめてたのは、お姉ちゃんたち自身の趣味」
 七菜と翠、茜とは、体験入学の前からの共謀者だったのだ。つまり校長室での七菜と翠の自己紹介は、茶番だったわけだ。それはおそらく、武生だけではなく、校長先生の目をあざむくためのものだったのだろう。中学卒業後に来た七菜と、高校生でありながら体験入学に来た武生。よく似た二人の接点である翠が、七菜や悟との関係を伏せたのは当然だ。さらにここに、幼稚園児でありながら身長の高い瑠璃を考え合わせれば、あの聡明な校長のことだ、すぐに彼らの計画を看破したに違いない。
 妙なところで得心のいった武生に、瑠璃は、部屋の中に響き渡る高い声で――改めて、問いを発した。

「ねぇ、武生お兄ちゃん。もう一度訊くわ。瑠璃のお友達に、なってくれるわよね?」

 武生は目を閉じた。そう、自分より年下の少年たちが、自ら恥をかくことを覚悟してまで、彼女のために――身体が大きいという理由だけで辛い幼少期を送ってきた瑠璃のために、尽くしてきたのだ。自分たちが、単なる露払いでしかないと知りながら。
 だが――武生がここで答えを誤れば、彼らの思いを、覚悟を、願いを、すべて潰してしまう。
 自分がどうするべきか、もはや、自明だった。
 答えは、決まっていた。
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