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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2017-11

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体験入学 第一章(10)


 (10)

 屈辱と、言い返せない悔しさに身を震わせながら、武生は文月のそばを離れた。店の一角で、翠が何やらバッグを選んでいる。武生の姿を見ると、翠はにっこり笑った。
「やっと来たわね、ゆずかちゃん。ねぇ、どれがいいかしら?」
「……、……うん、これかな」
 諦めたような口調で、武生が答える。翠が武生に示した複数のバッグは、幼稚園児向けから高校生向けまである多種多様な通学鞄の中で、特に幼い女の子向けの可愛らしいデザインのものばかりだったが、さらにその中から武生が選んだのは、とりわけベビーピンクの鮮やかな、小さなバックパックだった。つまり、この店で一番女の子らしいデザインのものだ。しかもビニール生地ではなく、しっかりした革製のもの。長い期間使うことを前提にした、ちょっとした高級品だ。
 翠は一瞬驚いたように目を開いたあと、武生の意図を理解したようだった。
「……そう、判ったわ。ならちょっと背負ってみて」
「うん」
 言われるがまま、武生は素直にバックパックを背負う。リュックと違い、箱形のそれは、肩紐を調節すると背中にぴったりとフィットする。武生は口元に笑みを浮かべ、
「大丈夫だね。……これでいいよ」
「あ、あともう一つ。幼稚園生の定番は、これでしょ」
 そう言って彼女が渡したのは、女の子向けキャラクターのプリントが施された、園児用の真っ赤なショルダーバッグ。武生は特に感想もなく肯いて、それを肩に斜めがけする。
 こうしてバッグまで揃えると、幼稚園児の制服を着て、小物まで揃えた彼の姿は、本当に身長さえ無視すれば、幼稚園に通う年頃の女児としか見えない。
「あとは、靴ね」
 翠がシューズ売り場に向かい、武生もバッグを背中と肩にかけたまま、大人しく彼女に続く。いくつもデザインがある中で、武生はピンクと白のローファーを選び、「あまりピンクばかりでも」という翠の意見で白のローファーに決めた。……また、しばらく「ゆずか」として外に出て、女の子の練習をしましょうという翠の意見を受け入れて、武生はそれ用に、ピンクの可愛いスニーカーを選んだ。白地にカラフルな花柄のメッシュで、その上からピンクの飾りを施した、可愛らしいデザインのものだ。同じデザインでパウダーブルーのものもあったのだが、武生は敢えてピンクを選んだ。中学生の女の子だって、こんなデザインの物は選ばないだろう。しかし武生には、迷いはなかった。
 武生は持ってきた靴を脱ぎ、白いローファーを試し履きした。女物、しかも子供用のものだったが、なんとか一番大きいサイズがぴったり合った。同じサイズだから、スニーカーのほうもぴったりだ。
「うん、これで完璧ね。……すいません、お会計お願いします」
 翠は文月を呼び、武生が選んだ物をカウンターに載せていく。文月も二人のやりとりは遠くから見ていたようで、武生と目が合うと、ぱちんとウィンクした。
「頑張ってね、柚川くん。お姉さんも応援してるから」
 武生はそれに、少し笑って肯いた。だから次に文月が言ったことをきいても、それほど動揺しなかった。
「じゃ、今日はこのまま帰りますか? 次回いらっしゃるときにお返しいただければ、お持ち下さって構いませんから」
「……どうする、武生?」
 二人が、武生を見る。
 武生は、力強く肯いた。

 ……そんなこんなでこれから一ヶ月、武生は幼稚園の女の子として振る舞うよう、翠から様々な「訓練」を受け、六月最後の日曜日に当たる今日この日、体験入学に参加している。
 武生はいま、深山小学校の敷地内を、翠に手を引かれて歩いている。あの制服店での覚悟は、文月の雰囲気に流されたものでしかなかったことを、いまの彼なら断言できる。全く、幼稚園児の制服を着てあの店を出たのは、大きな間違いだったことを。
 そのあたりのことは、正直、武生にとっては思い出したくないことばかりだ。
 ちょうどよく、目の前には、小学校の玄関が見えてきた。
 武生は覚悟を入れ直して、他の子供に挨拶をした。
「こんにちは、竹尾ゆずかです。よろしくお願いします!」
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