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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2017-11

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乙女座の園 終章


  終章 宴のあと

「あら、おはよう……って、どうしたの有沢君」
「おはようございまぁす……って、どうしたんですか社長」
 明けて、月曜日。
 出社してきた有沢良介の姿を見て、黒谷晴香は絶句した。同様に、出社してきた良介も、社長の姿を見て絶句した。
 まず、良介。
「ああ……これですか? 実は私、このたび婚約することになりまして、まだ婚約も正式に決まったわけではないんですけど、相手が、こういう服を着ている方が喜ぶものですから」
「……えーと、婚約って……? 相手は、その……」
「もちろん、女性ですよ。男とは婚約できませんからね」
 珍しいほどあっけにとられた表情の晴香に、良介はすまし顔で答える。
 出社してきた良介が着ていたのは、ノースリーブのブラウスにノーマルスカート。足元はヒールのついたパンプスで、キャリアウーマン風のいでたちだ。メイクもばっちり決まっている。
 どう見ても女性としか見えない良介の姿から考えれば、「男と婚約した」と言われた方がよほどしっくり来るのだが、どうもそうではないらしい。晴香は微妙な表情で、頭を掻いた。
 晴香の質問が途切れたところで、今度は逆に、良介が晴香に問いかける。
「それにしても、社長もどうしたんです? 何やら、ずいぶん可愛い格好ですけど」
「……ありがと。でも、有沢君に言われると微妙ね」
 そして、黒谷社長。
 いままで黒のパンツスーツばかりで、スカートはおろか女性的なラインのブラウスさえ、着ているのを見たことがなかった黒谷社長。しかしいまの彼女は、フレンチ袖のピンタックブラウスに、細かいプリーツの入ったシャンペンゴールドのスカートという、いかにも女性らしい服装だったのだ。
 良介の指摘を受けて苦笑いしながらも、晴香は優しい口調で説明しはじめた。
「ちょっとした心境の変化よ。これからは、肩肘張って男らしくするの、やめようと思ってね」
「へぇ……」
 結局この社長が、「女装」に対して何を思っていたのか、聞くことはできなかったし、今回のことが一体どういう心境の変化なのかも、まだ話す気はないようだ。
 そのうち聞く機会もあるだろう、と思いながら、良介は小さく笑った。
「でも、そういう服も似合ってますよ、社長」
「ありがと」
 二人が笑みを交わしたとき、「B&B」事務所に留美が入ってきた。彼女は特ダネを掴んだジャーナリストのように叫びながら、
「大変ですっ、社長っ! 有沢先輩が昨日カテドラルで結婚式を……」
 飛び込んできた留美を見て、晴香と良介はくすくすと笑い交わした。

 季節は夏。「B&B」は新しいプロジェクトに向けて、ふたたび動き始める。
                          Fin.
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乙女座の園 第8エリア(5)


 (5)

 鏡の前に立ったとき、思わず良介の唇に笑みがこぼれた。シンプルな、純白のドレス。レースの手袋をはめた手元には、紅薔薇のブーケ。ティアラにヴェール。大きく開いた胸元には、真珠のネックレスが光る。
 自分でも、思わず見とれるほどの装いだ。この姿を見たら、円香はどれだけ喜んでくれるだろう。そう考えるだけで、良介の胸は躍った。
「こちらへ、ゆっくりどうぞ」
 先ほどまで着替えを手伝ってくれた若い女性スタッフが、にっこり笑って誘導してくれる。この女性スタッフは、良介が男性であると知りながらも、喜んで着付けをやってくれたのだ。からかうような言葉はなく、本当に女性に対するのと同じ扱いで、良介としても嬉しかった。
 ブーケを手にしずしずと歩き出した良介に、そのスタッフは囁いた。
「お綺麗ですよ、とても」
 ありがとう、と小さく言って、良介は円香の待つ、カテドラルの礼拝堂に向かう。
 花嫁控え室から短い廊下を抜け、良介は礼拝堂のドアの前に立つ。左右のスタッフがドアを押し開き、そして……正面の祭壇に、円香の姿を見出した。
 良介はゆっくりと、祭壇に続く道に敷かれた絨毯の上を歩く。まるでヴァージン・ロードのようだが、本来なら父親が手を引くところを花嫁一人で歩くのは、これが本当の結婚式ではない、ということのあらわれだった。
 絨毯の道のりは20メートルほどだったが、その左右には椅子が並び、40人ほどの列席者で埋まっていた。みな良介を見ると、驚嘆するような、羨むような溜息を漏らした。
 そして良介は、一段高くなった祭壇前に上り──そこで待っていた円香と、向かい合った。
「綺麗だよ、リサ」
 司祭にも聞こえないような小さな声で囁く円香。良介も囁き返す。
「素敵よ、円香」
 円香が着ていたのは、花婿用の、白いタキシード。髪は後ろでひっつめるように束ねていて、正面から見ると、オールバックにした青年のように見えた。
「あー……おほん。ではこれより、新郎月織円香、新婦月織リサの、結婚式を開始いたします」
 司祭役の女性スタッフが、開式を宣言する。そしていよいよ、2人の「結婚式」が始まった。
 もちろん擬制の結婚式なので、色々と略式になっている。賛美歌やら何やらはほんの一楽節でおわり、すぐに「誓いの言葉」となる。
「新郎、月織円香よ」
「はい」
「汝円香は、健やかな時も病める時も、妻リサを愛することを、誓いますか?」
「誓います」
 円香の返事に、司祭は大きく肯く。そして良介を振り向き、
「新婦、リサよ」
「はい」
「汝リサは、健やかな時も病める時も、夫円香を愛することを、誓いますか?」
「……っ、誓いますっ」
 良介──いや、リサの声が、震えた。
「では……誓いのキスを」
 2人の距離が、近づく。そして、身体が重なった。リサは円香にもたれかかるように。円香はリサを受け止めるように。
 円香の唇が、やや乱暴にリサのそれに重なる。リサは優しく、円香の唇を受け入れた。2人の唇が重なった直後、参列者から割れんばかりの拍手が起こったが──もはや2人の耳にその音は、まったく届いていなかった。

乙女座の園 第8エリア(4)


 (4)

 良介が《乙女座の園》にお客として入ったのは、当然のことながらはじめてだった。彼は新鮮な気持ちで、園内を見回した。
 入場門《Horn Gate》をくぐると、すぐ正面には煉瓦敷きの広場《Piazzale Roma》と、その中心に少年が水瓶を持った姿の石像が並ぶ噴水《Ganymedes》が見える。向こうには、遠くのエリアにあるアトラクションや、真っ白な教会が見える。
 右手に第1エリアのカフェテリア《Sweet Spirits》があり、そこからほぼ反時計回りに園の外周を取り囲むように、アトラクションやショップが連なっている。第2エリアのクルージング《Lakeside Swan》の舞台となる大きなプールと、陰に隠れるように食事処《Hime-Goten》。その隣は第3エリアで、ミュージカル《Alice in Waterland》を上演するホールが建っている。第4エリアにあるのはグッズショップ《The Grass Slipper》や、回転木馬《Merry-go-round》、大観覧車《Honey Moon》だ。
 つづいて第5エリアのフォトスタジオ《Royal Princess》、第6エリアは絶叫アトラクション《Tear of Marmaid》と、少し離れた場所にゴシックホラーハウス《Phantasmagorie》。そして広場を囲む周囲の道は、第7エリアとしてナイトパレード《Cendrillon》の舞台となり、そこかしこに小さいメルヒェンな建物群《Fairy Nest》が立ち並ぶ。
 そして正面の遠景に、白く美しい姿で佇立するのが第8エリアの建物、カテドラル《Bridal Dream》である。フォトスタジオ《Royal Princess》と同様に、綺麗な衣装を着て写真撮影をすることが出来るようになっているが、なんと言っても「ウエディングドレス風」の服を着ることが出来るのが、最大の特徴である。
 この辺りは、女性の微妙な心理をついている。ウエディングドレスはやはり綺麗だし、結婚前でも、あるいは結婚したあとでも着てみたいと思う女性は少なくない。しかし未婚の女性にとって、ウエディングドレスは結婚に際して着る特別な衣装であり、結婚前に着るなんて……という抵抗感も、若干ある。そこで「ウエディングドレス風」と称することで、これはウエディングドレスではないから着ても問題なし、という言い訳がきくようにしたのだ。
 しかもカテドラルの内部は「撮影」ブロックと「婚礼」ブロックに分かれていて、「婚礼」エリアでは、略式で結婚式の雰囲気を味わうことが出来るようになっている。二人が目指しているのは、そのうち「婚礼」ブロックへの入口だった。
 良介たちはまっすぐに進み、広場を通って噴水の前を抜け、白い教会に向かう。その道すがら、円香は楽しそうにこう言った。
「この前行ったときは、あたし、あのカテドラルで花嫁役をやったのよね。ほら、あそこにある衣装って、新郎と新婦、あとあんまり着る人はいないけど司祭の衣装が揃ってるじゃない。あたしはその中でも、新婦役だったんだ。ほかの二人が、新郎と司祭をやって、ね」
「へぇ……円香の花嫁姿、すっごく綺麗だろうなぁ……」
「うん、けっこう綺麗に撮れてて、自分でも驚いちゃった。でね、だから今回は、あたし新郎役をやりたいんだ」
「いいよ。……ってことは、私が新婦役?」
 良介はつられて返事をしたあと、思わず聞き返した。円香は笑って、
「そうだね。リサが花嫁衣装を着て、あたしのお嫁さんになるんだ。リサなら、きっと似合うよ」
「う、うん……でも、私……」
 あそこの着替えシステムがどうなっていたか良く覚えていないが、もしも男だとばれたらまずくはないだろうか? 良介の危惧も知らぬげに、円香は彼の目を見つめて、だめ押しの一言を言った。
「ね、リサ。いいよね? あたしのお嫁さんになってほしいんだ。今日限りのことじゃなくて、これから先も、ずっと」
「え……? え? それって……!」
 円香の手が、良介の手に重なる。円香は真剣な目で、良介の目をのぞき込んでいる。
 良介は思わず目を伏せた。それは本当に、突然のプロポーズに当惑し、恥じらいながらも肯く、若い女性のような仕草だった。

乙女座の園 第8エリア(3)


 (3)

 そこまで言われてしまった以上、どうして女装を拒むことが出来るだろう?
 結局こうなるんだな、と思いつつ、良介はスカートの裾をつまんだ。白いノーマルスカートに、紺のラインが2本入っている。七分丈のシャツも、フェミニンではなかったが、男物ではありえないデザインだ。しかしどちらも、いままで仕事で着せられた服の数々に比べれば、だいぶ気楽だった。
 喫茶店を出た2人は、途中でもう一度ショップに立ち寄ったあと、駅前のカラオケ店に入った。そして良介は個室で、いまさっき購入した女性用の服に着替えた。バッグも中身を交換して、良介が円香のショルダーバッグを持ち、円香が良介のハンドバッグを提げる。顔に若干の化粧を施せば、一見した限りでは男だとばれない程度には、女性的な容姿になる。
「リサってば、本当に似合ってるね。あたしより女っぽい?」
「そんなこと無いって。化粧してるからだよ」
「うーん。でも、やるとなったら本格的ね。下着まで揃えるなんて」
「だってスカートの下にトランクスとか穿いてて、スカートのヒップにラインが浮くとまずいし」
 良介は溜息をついて、カラオケ店の女子トイレで鏡を見返す。ここに来る前に寄ったショップで、ブラジャーとショーツ、ストッキングを購入してもらったのだ。ブラウスやスカートの下には、ちゃんと女性用の肌着を身につけている。
 男物の腕時計はそのままだが、いまの良介を見て男性だと看破できる人間が、果たしてどれだけいるだろう。鏡の前でポーズをとり、良介は自分の仕上がりに、ちょっと満足していた。
 もちろん、円香の話を聞いただけで、すぐに女装に対する忌避感が無くなったわけではない。しかし、女装を恥ずかしいと思うことそれ自体への後ろめたさや、円香に「魅力的だ」と言ってもらえたことから来る喜びが、彼の心理に微妙な変化をもたらしたことも、また事実だったのである。簡潔に言えば、深層心理にあった女装時の安らぎと、女装に対するごくわずかな喜びとを求める感情が、女装を拒否できない理屈によって正当化されたのだった。
(恥ずかしいけど……でも、女装を恥ずかしがるってことそのものが、おかしいんだよな……)
(それに円香も……僕のことを、女装しているときの方が活き活きしている、って言ってくれたんだし……もしかして、いままで僕に女装させていた社長も、同じ事を感じていたんだろうか……)
 もっとも、たとえそうであるにしたって、黒谷社長から言われた時には、単に女装させるために方便だとしか考えなかったのだが。円香に言われるとあっさり納得するあたり、彼自身は気付いていなかったが、けっこう現金なのだった。
 良介が着ていた服は、いま円香が持っている、良介のバッグの中に入っている。円香は彼を見て、にっこり笑った。
「ね、これからあたしがどこに連れて行こうとしているか、判る?」
「うん。だいたい想像はつくかな」
「さすがリサね。じゃあ、行きましょ」
 二人は打ち合わせもせずに、カラオケ店をあとにした。
 その後ろで、受付の女の子が、(あれ、あの部屋は確か男女のカップルで入ったような……)と、狐につままれたような顔をしていた。

乙女座の園 第8エリア(2)


 (2)

「なんかさ、女性が男物を着るのは普通だけど、男がスカートを穿くのは恥ずかしい、みっともないなんて、すっごく男尊女卑的だと思うんだよね。その根底にはさ、男の方が女よりも格上で、だから男が女の服を着るなんて恥ずべき行為なんだ、ってのがあるんじゃない?」
 絶句する良介を置き去りに、円香の言葉は続く。
「女性は男性の下に属しているから、男性は女性的だ、って言われるのをすごく嫌がるようにさえ思える。もちろん女性だって、男と間違われたり、女性に見えないって言われたら傷つくよ? でもね、それはどちらかというと、自分の女性らしさを否定されたからで、別に男を劣位に置いてるから、男と一緒にされるのが嫌だ、ってわけではないんだよ」
「…………」
「もちろん、これはあたしの一方的な解釈で、本当はもっと違うのかも知れないけれど──でも一つ、思うことはある」
 円香は迷うように一拍おいた。しかしすぐに、やや頬を赤らめながらも話を続ける。
「あのね、女装者って、いるじゃない。男性の中でも女性の服を着るのが好きだったり、女性用下着を身につけるのが好きだったりする人。もちろん一部には性同一性障害の人もいて、本心から、自分は女性になりたい、社会的・性的関係においても女性として扱われたいって思う人もいる。
 そういう人じゃなくて、いわゆる『女装者』、女装して性的興奮を得る──ええいもういっちゃえばオナニーするような人って、いるよね?」
 いるわよね、と訊かれても答えようがない。円香のあまりにも露骨な言動に、良介は思わず赤くなって、言葉に詰まる。円香も少し赤い顔で、
「いるのよ、そういう人が。で、そういう人って結構、マゾヒストが多いのよ。女装マゾとか、女装奴隷とか、そんな言葉もあるみたいだし。マゾヒストって要するに、他の人からバカにされたり、辱められたりすることに興奮を見出す人だよね。なんで、女装がマゾヒズムと結びつくのさ?」
「そ、それは……」
「女装ってのが、恥ずべきこと、他人から馬鹿にされること、自分の品位を貶めることだと考えているからこそ、そこにマゾヒズムが存在し得るんじゃないの、って思うわけよ。だとしたらそれって、女性を馬鹿にしていることにならない?
 マゾヒストの人は、例えば犬とか豚とかに自分をなぞらえることが多いけれど、女装ってのもそれに準じるかたちなんじゃないかな。異性装を恥ずかしいと考えるのなら、例えば女性の間で男装マゾなんてのが生まれても、おかしくないのにね」
 立て板に水と話す円香。しかし良介は別にSMの世界には詳しくないし、円香の話はちんぷんかんぷんだった。
 それでも、彼女の言いたいことは大体判る。先日の黒谷社長の話からの連想もあり、話の大筋は掴んでいた。
「ええと、要するに、女装に対して男性が軽蔑、忌避の感情を持つことの底流には、女性蔑視の観念が存在する、ってこと?」
「うん、だいたいそうね」
 円香は肯いてから、こう結論づけた。
「つまりあたしとしては、男性が女装を恥ずかしい、嫌だって思うのは、男尊女卑的思想の現れなんじゃないの、と思うわけなのです。Can you understand?」

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